2016年12月9日金曜日

第10回 レオナルドの「最後の晩餐」

今回はミラノ。

サンタ・マリア・デッレ・グラーツィエ聖堂「食堂」にあります
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)の「最後の晩餐」1494-98について
たっぷりと1時間半お話ししていただきました。


1. 主題の意味
2. 構図について いろんな時代の「最後の晩餐」の構図
3-1.技法について  セッコ技法  
 -2.なぜ剥落したか  
4 修復史          

あまりに盛りだくさんで、今回はピックアップ不能です。。
1517年にすでにひび割れが確認されたのですね。。。



見た人の心落ち着かせる安定した構図。

 4つの三角形+真ん中の正三角形 バランスが良い






修復によって キリストの「口」が開いていることが判明する。

「話した瞬間」のどよめきを表現した絵だということ。











16世紀の模写
右側のタペストリーの模様も何とか見えます。

削られたキリストの足も見えます。







実際の「聖堂の食堂の窓」が左側にあるので 光があたる右側の壁が白いんだそうです。行ってみないとわからないこともありますね。見学には予約が必要だとのこと。



<次回2017年4月からの講座は2017年1月初旬に詳細が発表されます。発表になりましたらすぐにお知らせいたします。>

<「美術Ⅱ新百合ヶ丘」の12回の西洋美術史の講座をお受けになりたい方は、こちら(←リンク)をお読みください。>

2016年12月2日金曜日

第9回 壁画の旅-実践編

壁画は14世紀から16世紀に隆盛になりました。 


大聖堂、市庁舎、パラッツォ(富裕な個人の邸館)の建設ラッシュにつき、モザイク装飾の代用として、安価で早くできるフレスコ画がたくさん描かれたのです。 教育目的の壁画→装飾としての壁画としても。

フィレンツェ、プラート、パドヴァ、マントヴァ、トレント、カスティリオーネ・オローナ、フェラーラ、そして、ローマのマゾリーノ作品など、今回はイタリア各地の15世紀後半までの壁画を駆け足でめぐりました。

子弟関係、交友関係、共同作業、住んでいた場所、行った場所、影響された作品などで、描き方が進化していったことがわかりました。

見せていただいた壁画の数々の一部です。



 フィレンツェ、パラッツオ・メディチ・リッカルディ
  

ヴェノッツオ・ゴッツォリ 東方三博士の旅
     

画家の自画像とサインを入れた最初の例。
     
メディチ家の人々の肖像も入っている








マントヴァ

マンテーニャの「カーメラ・デリ・スポージ」の天井。
  
 私たちは井戸の底。






フェラーラ パラッツォ・スキファノイア
   デル・コッサ 「月歴画」4月

真ん中にビーナス、右に三美神

ボッティチェッリ より 前の時代になります。





新しい用語、「ストラッポ」
フレスコ画を剥がして保存する技術です。

2016年11月25日金曜日

第8回 ピエロ・デッラ・フランチェスカの壁画

今日はアレッツォの サン・フランチェスコ聖堂のピエロ・デッラ・フランチェスカの「聖十字架伝説」の壁画を中心として、

聖十字架伝説、
ピエロ・デッラ・フランチェスカの絵画、絵画の特徴、
壁画の技法、ピエロ・デッラ・フランチェスカが描いたところ、弟子の手によるところ
この聖堂の壁画の並び方(政治的意味合いもある?)、
フィレンツェのサンタクローチェ教会の聖十字架伝説の壁画との比較(50年の違いで、こちらはルネッサンスの明快さを持ったものとなっている)など、詳しく説明していただきました。

先週教えていただいた、「スポルヴェロ技法」が随所に見られます。壁画制作において、時間の節約、合理化ができたそうです。





「受胎告知」の左上に描かれている「父なる神」と、






「ヘラクリウス帝のコスロエス(ホスロー王)への勝利」

右の方に描かれている「コスロエス」の顔が同じ!


 同じカルトーネのコピーを使ったと思われます。

2016年11月18日金曜日

第7回 15世紀の壁画ースポルヴェロ技法

フレスコ画は名前(フレスコ→フレッシュ)にあるように、漆喰が乾くまでに急いで描かなければなりません。
遠近法を絵に取り入れようとすると どうしても描くのに時間がかかってきます。
早く描くためにマザッチョは下絵を方眼を使って拡大し壁面に描く、という方法をとりました。



15世紀の壁画では「画期的な道具」が使われるようになります。。「紙」です。
紙は14世紀にはなかった。

紙を使った「スポルヴェロ法」というフレスコ画の描き方、
そして、フラ・アンジェリコ、アンドレア・デル・カスターニョ、ドメニコ・ヴェネチアーノの解説をしていただきました。











Attribution: I, Sailko

アンドレア・デル・カスターニョのサンタポローニャ修道院壁画装飾ではスポルヴェロ 法が確認されます。

また、実際の建物の「右」に窓。
壁画の右にも窓。だまし絵のような光も構図に取り入れられています。





来週金曜10時半は「アレツッオ」の駅前で集合!

2016年11月4日金曜日

第6回 15世紀半ばの壁画ーパオロ・ウッチェロ



今日はパオロ・ウッチェロ(1397~1475)についてでした。
By The original uploader was MM at Italian Wikipedia 



ウッチェロは「いとも甘美なる遠近法」と叫んだ、と伝えられるように、遠近法の研究に没頭した人といわれています。


フィレンツェの サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の「緑の回廊」に「旧約聖書の物語」の壁画が描かれています。
ウッチェロはその中の2面+αを描いたらしいです。

ウッチェロの壁画「ノアの物語;大洪水」

(画面左:洪水前方舟、中央:洪水中、右:洪水後方舟)は
極端な遠近法が採用されていることで有名です。




市松模様の帽子を首にかけた若者は棍棒を持って方舟を割ろうとしています。
はしご(円形帽子の市松模様もはしごも遠近法表現のため)。

遠近法に加え、洪水のパニック状態の時に水泳する若者たち・口から水を吹き出す・・人物の行動も細かく見ていくと面白いです。






右側にはエウゲニウス4世 (ローマ教皇)が大きく描かれ、「フィレンツェで行われた1439年の東西宗教会議」との関連がしばしば指摘されるそうです。




3D効果の出る遠近法も研究していたそうです。

2016年10月28日金曜日

第5回 15世紀前半の壁画ーマザッチョ

15世紀になってくると、遠近法(線遠近法)がポピュラーになってきます。


「正三位一体」(フィレンツェ 、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会)

15世紀のマザッチョは幾何学をベースにした新しい手法である遠近法を壁画に用いました。釘や糸によって円や楕円を描いた痕跡があります。





Attribution: I, Sailko
ブランカッチ礼拝堂の壁画の解説をしていただきました。

ブランカッチ礼拝堂では

 国際ゴシックの画家マゾリーノ(マザッチョと同郷の14歳年上の人)とマザッチョとが協力した、バランスの良い制作がなされています。

マゾリーノの「原罪」と
マザッチョの「楽園追放」は対照的な作品です。

マザッチョ「貢の銭」では 私たちは視点を左から中央、又左、そして右へと動かすことになります。



2016年10月21日金曜日

第4回 シエナ派の壁画ー善政と悪政

シエナ派のアンブロージョ・ロレンツェッティ(1280-1348頃)の善政と悪政の壁画(1338ー40頃、シエナ・パラッツォ・プッブリコ:::シエナ市役所)について詳しく解説していただきました。



悪政の中央にはルシファー;専制君主のイメージ
善政の中央には中年の男性(シエナの寓意);公共善の象徴



善政の効果として、日本の「洛中洛外図」に相当する、繁栄するシエナの図が描かれています。



2016年10月14日金曜日

第3回 ジョットの壁画② 七つの善徳



By Rastaman3000


先週に引き続きジョットです。

スクロヴェーニ礼拝堂はパドヴァの悪名高い高利貸しであったレジナルド・スクロヴェーニの、その息子エンリコの寄進です。都市の有力者の寄進により 壁画制作が活発化してきます。








【壁画の見方】物語展開;巨大な画面をどのように分割し、効果的に説話を視覚化しているか

ここでは螺旋状に時間の順序に従って配置されています。
 参考 ローマのトラヤヌス柱

壁面とともに腰板の7つの善徳についても解説していただきました。

2016年10月7日金曜日

オープン講座のお知らせ

   終了しました。 ご参加ありがとうございます。


マザッチョの壁画;フィレンチェのブランカッチ礼拝堂
講師 多摩美術大学教授 諸川春樹
日時:2016年10月28日 金曜日10:30~12:00



                                                          Masaccio  public domain

美術Ⅱ オープン講座が開かれます。

壁画が偉大だった時代を求めて

第5回 
15世紀前半;
マザッチョの壁画;フィレンチェのブランカッチ礼拝堂
講師 多摩美術大学教授 諸川春樹

日時:2016年10月28日 金曜日10:30~12:00

会場:新百合21ビルB2多目的ホール (小田急線 新百合ヶ丘から徒歩3分)  


費用 無料 (ほかのオープン講座と合わせて2講座まで)



申し込み先 かわさき市民アカデミー フェスタ ’16 実行委員会事務局

tel 044-733-5590   (問合せ受付時間:平日午前9時~午後4時)
fax 044-722-5761
 http://npoacademy.jp

  Fax または ネット申し込み

 先着順受付中 10月21日まで

終了しました。


※ 川崎市民以外も受講できます。

第2回 ジョットの壁画① 14世紀 アッシージのサン・フランチェスコ聖堂

 By Roberto Ferrari from Campogalliano (Modena), Italy (Assisi)  

  




アッシジ駅 から サン・フランチェスコ聖堂を目指します。

キリスト教の聖地です。ゴシック教会であり、フレスコ画の美術館ともいわれます。


ここには 聖フランチェスコの生涯を描いたジョットのフレスコ画があります。

聖フランチェスコをジョットの壁画とともに解説していただきました。

「財産放棄」という壁画では

左側に父親の集団 右側に豪華な衣を脱いだ聖フランチェスコ、フランチェスコの視線と手の先には 「神の手」が。。。場面がわかりやすく表現されています。

背景の建築物、人物の表情、動作の表現などからジョットは「近代絵画の父」とも呼ばれているそうです。



次回は パドヴァのジョット、スクロヴェーニ礼拝堂を詳しく。

2016年9月30日金曜日

第1回 フレスコ画の基本





イタリア壁画の旅に出かけるに当たってフレスコ画の基本について学びました。

どうしてレオナルド・ダ・ヴィンチの最後の晩餐の壁画が傷み、
ミケランジェロ システィーナ礼拝堂の壁画が美しいままなのでしょうか?

フレスコ はイタリア語ですが どいう意味から来ているか、
壁画の構造、描き方から見た壁画の楽しみ方を知りました。








2016年9月23日金曜日

2016.後期 美術Ⅱ・概要・壁画が偉大だった時代を求めて

コース 美術Ⅱ
時間 毎回10:30 ~12:00

講師
多摩美術大学教授
諸川 春樹
 先生

場所 :新百合21ビルB2ホール  地図で表示


1  9/30(金)  フレスコ画の基本;技法と表現

2  10/7(金)   14世紀;ジョットの壁画1;アッシージのサン・フランチェスコ聖堂

3  10/14(金)  14世紀;ジョットの壁画2;パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂

4  10/21(金)   14世紀;シエナ派の壁画;シエナのパラッツォ・プッブリコ

5  10/28(金)   15世紀前半;マザッチョの壁画;フィレンツェのブランカッチ礼拝堂

6  11/4(金)   15世紀半ば;ウッチェロの壁画;フィレンツェのキオストロ・ヴェルデ(緑の回廊)

7  11/18(金)   15世紀半ば;カスターニョの壁画;フィレンツェのサンタポローニャ女子修道院

8  11/25(金)   15世紀半ば;ピエロ・デッラ・フランチェスカの壁画;アレッツォの「聖十字架伝説」

9  12/2(金)   壁画をめぐる旅(まとめを兼ねた実践編);フラ・アンジェリコ、ボッティチェッリなど見所

10  12/9(金)   15世紀末;レオナルド・ダ・ヴィンチ;ミラノの「最後の晩餐」

11  1/13(金)   16世紀前半;ラファエッロの壁画;ヴァティカンの「署名の間」

12  1/27(金)   16世紀前半;ミケランジェロの壁画;ヴァティカンのシスティーナ礼拝堂


概要
イタリアに旅をしてきた学生に旅行の印象を聞きましたところ、「大きなサイゼリアのようでした」との答えが返ってきました。なるほど、このレストランにはイタリア絵画が壁画になっています。素直な感想ですが、やはり私たち日本人にとって、壁画はあまり馴染みのないものなのでしょう。そこで今回はイタリアで制作された有名、あるいは準有名な壁画作品を鑑賞しながら、壁画とは何かという基本的な問題を考えてみたいと思います。イタリア絵画はセミプロ級の方も、またまったくの初心者の方も、ご一緒に「壁画の旅」に出かけましょう。