2025年1月31日金曜日

第10回 初期ルネサンス美術の展開 1440年代の動向

 松浦弘明先生の西洋美術史講座第10回は<初期ルネサンス美術の展開 1440年代の動向について>でした。主にフラ・アンジェリコの「受胎告知」とパオロ・ウッチェロの「大洪水の終息」を中心に「図像解釈学」で解説していただきました。

フィレンツェのサン・マルコ美術館は元はドメニコ会の修道院。そこに暮らす修道士たちはキリストの物語はもうすでに充分知っています。

そんな中でのサンマルコ美術館の有名なフラ・アンジェリコの「受胎告知」の絵画はこれまで説明のあったような物語を語るための絵とは目的が異なります。

サン・マルコ修道院2階平面図
真ん中の階段を上がったところに
フラ・アンジェリコの「受胎告知」が描かれている

階段を登り自分の僧室へ戻る時必ず目にする<受胎告知>。

『受胎告知』1440–1445年
フラ・アンジェリコ
サン・マルコ修道院内部

内部廊下
from Web garalley of art 

↑絵の下方の銘文に

「処女マリアの像を前にしたとき、アヴェと挨拶することを忘れぬよう」とあります。

修道士たちは毎日心に刻んだことでしょう。


⇓他方、僧の独房の一つに描かれている「受胎告知」はとてもシンプルで、脇には聖書以外の人物の「殉教聖人ピエトロ」が描かれています。


受胎告知フラ・アンジェリコ1437-1443サンマルコ美術館 独房


パオロ・ウッチェロのフレスコ画は図像が斬新です。大洪水という主題を借りてその時代の宗教問題のテーマを描こうとしている、ということでした。細かく説明していただきました。ノアがどこにいるかわかりますか。

パオロ・ウッチェロ
創世記伝連作
サンタ・マリア・ノヴェッラ教会
『大洪水と終息』1447頃

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2025年1月24日金曜日

特別講座 絵画は劇場になった!-絵画と演劇との関係をめぐって(空間編)2

 諸川春樹先生の特別講座、<絵画は劇場になった!-絵画と演劇との関係をめぐって(空間編)>もとても驚く講座でした。本当に楽しく講座を受けました。ありがとうございます。

演劇が盛んになると 小道具や大道具、舞台背景などが本格的に発達していきます。その様子が絵画に現れたり、そのころ絵画で発明された「遠近法」の表現が舞台背景として取り入れられていったりと興味深い絵画や文化事情などのお話に驚かされました。

紹介された中のいくつかの画像を貼りますので 大きくしてご覧ください。

大天使ガブリエルの光輪のヘッドギアと羽根のランドセル‼

デル・コッサ「受胎告知」
1470頃 ドレスデン美術館


ボッティチェリ
神秘の降誕
1501
ロンドン・ナショナルギャラリー


ブルネスレスキの演劇装置「受胎告知」本物の1/25スケール
フィレンツェ 15-16世紀サン・フェリーチェ教会で演じられたものの模型での復元


(先生からご紹介はありませんでしたが、興味深いYouTubeがありましたのでシェアします。)

15世紀にウィトルウィウス(BC1世紀の建築家)の『建築論』が再発見され、そこに記された古代劇場の簡単な記述が「古代の劇場の再現」となっていきます。遠近法も舞台背景に適用可能?と考えられていきます。

ペルッルィ 遠近法の間
1515-17
ローマ ヴィッラ・ファルネジーナ



セバスティアーノ・セルリオ
(建築や遠近法についての著作より)「舞台背景(悲劇)」
1544頃

遠近法の舞台背景が絵画へも適用されていきます。(悲劇の舞台にはオベリスクと円柱があります。)

パリス・ポルドーネ
バテシバの水浴
1549頃
ケルン、ヴァルラフ=リヒャルツ美術館

ティントレット
弟子の洗足
1547
プラド美術館

二コラ・プサン
アシュドドの疫病
1630
ルーブル美術館

このような時代背景があって、宮廷から都市の中の演劇空間へ独立した劇場「テアトロ・オリンピコ」が建てられることになります。

建築家パッラディオ
テアトロ・オリンピコ 1580-83
ヴィンセンツァ

テアトロ・オリンピコの動画を挿入しました。
Empire of the Eye: The Magic of Illusion" released in 2003, presented by da Al Roker, an american productor and actor.

絵画と演劇の関係、いかがでしたでしょうか。

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2025年1月19日日曜日

お知らせ 2026前期美術2 じっくり学ぶ美術と文化:西洋近代(17&18世紀)

 2026前期美術2 じっくり学ぶ美術と文化:西洋近代(17&18世紀)

こんどの四月からの講座、ただいま受付中です

【講師】東京造形大学 教授 池上英洋先生

【場所】新百合21ビル 多目的ホール

【時間】毎回 午前10:30~12:00 (計12回)

★オンライン受講もできます★

この講座では、西洋近代をあつかいます。17世紀には、宗教戦争を背景に二種類のバロック文化が花開きます。続く18世紀には、絶対王政国家のためのロココ美術が隆盛を迎える一方、三つの革命をきっかけとするあらたな文化思潮が興ります。

サン=ベルナール峠を越えるボナパルト
ジャック=ルイ・ダヴィッド
ヴェルサイユ宮殿1枚目
1802

  1. 4/11(金)   近世末期の社会と美術のおさらい
  2. 4/18(金) 教会の危機と宮廷文化の変化
  3. 5/9(金) トレント公会議と世界伝道
  4. 5/23(金) プロパガンダ図像とベルニーニ
  5. 5/30(金) カラッチとカラヴァッジョ
  6. 6/6(金) 北方の絵画革新:レンブラントとフェルメール
  7. 6/13(金) 他地域のバロックとハイ・バロック
  8. 6/20(金) ロココ文化とブルボン王朝
  9. 6/27(金) フランス革命とナポレオン
  10. 7/11(金) 新古典主義とロマン主義
  11. 7/18(金) 産業革命とイギリス美術
  12. 7/25(金) その他の美術と19世紀への扉 


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2025年1月17日金曜日

特別講座:絵画は劇場になった!-絵画と演劇との関係をめぐって(時間編)1

 諸川春樹先生の特別講座、絵画は劇場になった!-絵画と演劇との関係をめぐって(時間編)が開かれました。

古代の演劇は中世に禁止されたのですが、ロマネスク期に教会の布教活動が活発化し、教会内で「聖史劇」が始まったそうです。そして教会内で演じられていた劇が町の広場で演じられるようになっていきます。

教会内の設備を使って演じられた様子が絵画でわかったり、簡単な特設舞台があったようであったり、絵画と演劇相互の影響が見られたりするそうです。

奥行きの浅い特設舞台が絵に反映されているのではないかと思われるドゥッチョの絵(マエスタの裏側)。

シエナ 荘厳の聖母子 背面
ドゥッチョ
1308
(講座で例として見せていただいたのは「キリストの復活」と「最後の晩餐」

真ん中右の棒を持った人物は舞台監督。

Jean Fouquet - The Martyrdom of St Apollonia - WGA08031
フーケ
聖アポロニア の殉教
エティエンヌ・シュヴァリエの時とう書より
1452頃
Musée Condé, Chantilly


町の広場での演劇。スイス、ルツェルン 

広場に特設舞台がいくつもあり、観客が順番に回って見る形。

ルツェルン受難劇の広場の仮設舞台メモ
レンワード・サイサットの1583年の劇
 

↑立体書き起こし(リンク)

舞台。右側に地獄を表す怪物の大きな口がある。

フランスのヴァランシエンヌに聖史劇の舞台。
(1547)

↑立体書き起こし(リンク)

↓上の舞台と同じ形の建物

祭壇画の裾絵(プレデッラ)の例
ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ
「マギの礼拝」1423 ウフィツィ美術館

メムリンク
キリスト伝
1470
サバウダ美術館、トリノ


トラヤヌス帝記念柱(いろいろな場面が順番に描かれている)、広場での劇(キリストの物語が演じられる舞台を順番に観客が移動して見ていく)、スクロヴェーニ礼拝堂壁画装飾(らせん状に展開されている場面を観者が動きながら見ていく)、異時同図法、など時間の移り変わりを劇や絵画でどう体感させていったかも具体例を見せていただき知ることができました。

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2025年1月10日金曜日

第9回 初期ルネサンス美術の展開 1430年代の動向

 松浦弘明先生の西洋美術史講座、第9回、1430年代の初期ルネサンスについてお話ししていただきました。

前回お話があった革新的な「マザッチョ」ですが すぐに受け入れられたわけではなく、「レオナルド」の時代になるまでには ある部分は受け入れられ、受け入れられない部分もあった とのことでした。

「フラ・アンジェリコ」「フィリッポ・リッピ」「ウッチェロ」についてマザッチョが受け入れられ 融合していった部分などを見ていきました。

時代の変化を見るときは「同じテーマ」を扱ったほかの作品を仔細に見て違いを調べるとよいそうです。「受胎告知」や「聖母子像」など比較しつつ見ていきました。

「受胎告知」についてはルカ伝1章26-28に詳しく記されていて、マリアの心情変化が3段階で語られているそうなのです。そのどの段階を描いているかでマリアの雰囲気(戸惑っている、受け入れている)が違うのだそうです。

細かい部分についてのお話しもありましたので、画像を大きくして復習してください。

フラ・アンジェリコ
コルトーナ祭壇画
1432頃
 CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

Lorenzo monaco, trittico dell'annunciazione (cropped2)
ロレンツォ・モナコ
1418頃
アカデミア美術館、フィレンツェ (イタリア)


ロレンツォ・モナコ
1423頃
バルトリーニ・サリンベーニ礼拝堂
Miguel Hermoso Cuesta, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

マザッチョ
1426
ロンドンナショナルギャラリー


フラ・アンジェリコ(絵画)とギベルティ
リナイオーリの壁祭壇
1433
サン・マルコ美術館、フィレンツェ
Lorenzo Ghiberti, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons

フィリッポ・リッピ
1437
タルキニアの聖母
国立アンティカ美術館、ローマ

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2025前期美術2講座は

池上英洋先生の

<じっくり学ぶ美術と文化:西洋近代17&18世紀>です。 オンラインでの受講もできます。

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